経営企画という仕事をしていると、コンサルティングファームに仕事を頼む側に回ります。
提案を受けて、人を選んで、進み方を見て、成果物を受け取る。この立場を何度か経験してきました。
コンサルへの転職を考えている人が読む記事は、たいてい「コンサル側から見た話」です。どんなスキルが必要か、どう転職するか。
ここでは逆を書きます。発注していた側が、実際に何を見ていたかです。
先に言っておくと、あまり気持ちのいい内容ではありません。
最初に見ているのは、たぶん中身ではない
正直に書きます。
初回の提案で最初に見ているのは、見た目と話し方です。
これは褒められた話ではないと分かっています。中身で判断すべきです。でも実際には、提案を受ける側は短時間で「この人と一緒にやれるか」を判断していて、その判断は中身を理解する前に始まっています。
そのうえで、資料を見ます。ここで効くのは簡潔さです。
ゴテゴテした資料は、見る気がなくなります。
図形が多い、色が多い、1枚に情報が詰まっている。作り込んでいるのは分かります。でも読む側からすると、どこを見ればいいのか分からない資料は、それだけで「整理できていない人」に見えます。
きれいな資料と、分かりやすい資料は違います。
「頭はいいけど使えない」の正体
いちばん記憶に残っているのは、うまくいかなかったほうです。
パワポもExcelも非常にきれいに作れて、ショートカットもよく知っている。作業の速さは明らかに社員より上でした。
でもその人は、この業界の仕事の流れをまったく理解していませんでした。
社員の代替として入ってもらったのですが、結果として何も進みませんでした。
これは能力が低いという話ではありません。実際、資料を作る能力は高かった。ただ、業務の流れが分かっていないと、何を作ればいいかが分からないのです。
そして何を作ればいいか分からない人に「何を作るか」を毎回指示するなら、それは社員がやったほうが早い。
発注側がいちばん困るのは、頼んだ側が考える量が減らないことです。
使えないと感じる瞬間は、だいたい仮説のところ
もうひとつ、はっきり言えることがあります。
仮説に納得感がないと、その先が全部つらくなります。
コンサルの提案には必ず仮説があります。「御社の課題はここにある」という見立てです。
ここに納得できないと、そのあと出てくる分析も施策も、どれだけ精緻でも受け取れません。土台が違うところに建物が積み上がっていくのを、黙って見ている時間になります。
そして仮説の納得感は、業務の流れを分かっているかどうかでほぼ決まります。
外から数字だけ見て作った仮説は、現場を知っている人間が聞くと「そこじゃない」と分かります。逆に、流れが分かっている人の仮説は、たとえ結論が意外でも「その視点はなかった」と受け取れる。
同じ「意外な結論」でも、片方は受け入れられて、片方は受け入れられません。
社内でやる仕事と、外に出す仕事の線引き
では、そもそも何を外に出しているのか。
私の場合、線引きははっきりしていて、リサーチ系で、一次情報の収集が必要なものです。
他社がどう動いているか、市場で何が起きているか。こういう情報は、自分たちで集めようとすると単純に手が足りません。情報の取り方そのものにノウハウが要るものもあります。
ここは「自分ではできない」と素直に思いました。
逆に言うと、それ以外で外に出したいと思った仕事はあまりありません。
正直に言うと、「社内では絶対に出てこなかった」提案はほとんどなかった
ここがいちばん書きにくい部分ですが、書きます。
コンサルの提案を受けて「これは社内からは絶対に出てこなかった」と思ったものは、正直ほとんどありません。
リサーチの部分は別です。集めてきた情報そのものには価値がありました。
でも、そこから導かれる結論や施策は、社内で議論していれば出ていた範囲のものが多かった、というのが実感です。
これはコンサルタントの能力の話ではないと思っています。事業のことをいちばん知っているのは、その事業をやっている人間だからです。外から来た人が数週間で、中の人間を超える洞察に到達するほうが、本来おかしい。
コンサル転職を考えている人にとっては、聞きたくない話かもしれません。
ただ、これを知っておくことには意味があります。発注側は、あなたが思っているほどコンサルを万能だと思っていないということだからです。
それでも「この人は違う」と思った人がいる
ここまで辛いことばかり書いてきましたが、例外がありました。
保険会社からコンサルに移った人と一緒に仕事をしたことがあります。
その人は、保険会社のことをよく分かっていました。だから話に具体性がある。仮説にも納得感がある。「そこじゃない」と思う瞬間がありませんでした。
一方で、新卒からコンサルという人たちは、上流の話はよく分かっているのだと思います。フレームワークも整理の仕方も、間違いなく上手い。
でも、営業の現場の最前線で何が起きているかは、いまひとつでした。
この差は埋まりにくいと感じます。現場は、資料を読んでも本には書いていないからです。
発注側の経験は、コンサルで武器になるか
なるはずです。ただし、武器になるのは業界の知識そのものではありません。
私が思う武器はこれです。
現場での経験にもとづいて仮説を立て、検証して、提案する。この一連ができること。
分解すると3つです。
仮説を立てる
現場を知っていると、最初の見立ての精度が違います。数字を見る前に「たぶんここだろう」が出てくる。これは資料からは作れません。
検証する
どこを見れば確かめられるかが分かります。現場にいた人間は、どの数字が実態を表していて、どの数字が形だけかを知っています。
提案する
受け取る側が何に困っているかが分かるので、刺さる形で出せます。
前に書いた記事でも触れましたが、私が保険会社からIT業界に移ったとき、いちばん役に立ったのは商品知識ではなく、保険会社の営業担当者の一日の仕事の流れでした。
コンサルでも同じことが起きるはずです。評価されるのは「その業界に詳しい」ことではなく、「その業界の人が、どこで何に時間を取られているかが体で分かる」ことのほうです。
まとめると
発注する側から見た話を並べ直します。
- 最初に見ているのは、見た目・話し方・資料の簡潔さ。中身の前に判断が始まっている
- 資料がきれいなことと、仕事ができることは別。業務の流れが分からないと、何を作るべきかが分からない
- 仮説に納得感がないと、その先が全部受け取れなくなる
- 外に出すのは一次情報の収集が必要なリサーチ。それ以外は社内でも出せることが多い
- ただし、前の業界を知っている人の提案には具体性があった
コンサルに移りたいと思っている人は、フレームワークや論理的思考力の勉強を先にするかもしれません。
でも発注する側が見ているのは、そこではありませんでした。
いま自分がいる現場で、何がどう動いているかを説明できるか。 そこに手持ちの武器があるなら、それを捨てて別のものを身につけに行く必要は、たぶんありません。
現場の経験が、外でどう評価されるかを聞いてみる
とはいえ、自分の現場経験がコンサルの世界でどのくらい通用するのかは、中にいると分かりません。
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