給料はテーブルで決まる。だから交渉できるのは入社前の一度だけ

数字から見たキャリア
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内定が出たときに「入ってから頑張ります」と言う人がいます。

印象はいいと思います。実際、そう言った本人も本気でしょう。

でも事業計画を作る側から見ていると、この順番は逆です。

頑張るのは入社した後の話で、年収が決まるのは入社する前だからです。

なぜそうなるのか。給料がどう決まっているかの構造から書きます。

大きな会社の給料は、たいてい「テーブル」で決まっている

一定以上の規模の会社、特に労働組合がある会社では、給与は等級ごとのテーブルで決まっています。

等級が決まれば、給与の幅もだいたい決まる。その中でどう動くかは、昇給のルールに従います。

これは硬直的に見えますが、そもそも公平性を担保するための仕組みです。同じ等級の人が、上司の好みで倍違ったら組織が持たない。

ただ、転職する側から見ると、この仕組みは重要な意味を持ちます。

経験者採用で本当に効くのは「どのテーブルに張り付くか」

中途で入るとき、決定的なのは入社時にどの等級に格付けされるかです。

ここで決まった位置が、その後の給与の出発点になります。そして出発点が違えば、同じ昇給率でも、数年後の差は開いたままです。

面接での受け答えや、入社後の働きぶりは、もちろん評価に効きます。でもそれはテーブルの中での動き方であって、テーブルそのものを飛び越える話ではありません。

「入ってから挽回する」が構造的に効きにくいのは、これが理由です。

挽回できないわけではありません。ただ、挽回に必要な年数と、入社時の格付けを1つ上げる交渉にかかる時間を比べると、後者のほうが圧倒的に短い。

昇給を決める人と、採用条件を決める人は違う

もうひとつ、外から見えにくい構造があります。

昇給の判断は、各事業部門の管理職がしています。 自分の部署の予算と、部下の評価を見て決める。

採用の判断は、人事部門がしています。 これは別の組織で、別の予算です。

つまり、同じ会社の中で、「既存社員の給料」と「新しく人を採るための条件」は、別の人が別の理屈で決めている。

だから、長くいる人に「今期は厳しい」と言いながら、抜けたポストを埋めるときには市場相場で出す、ということが起きます。

これは会社が意地悪なのではなく、単にそういう仕組みになっているだけです。

そして計画を作る側から見ると、人件費は最初から両方込みで置かれています。既存社員の昇給分も、新しく採る分も、同じ計画の中にある。ただ、それを実際に動かす人が別なので、現場では別々の話として進む。

グループ会社に移っても、水準が変わらないことがある

もうひとつ、知っておくと使える話があります。

グループ会社の間で、給与水準が揃っていることがあります。労働組合が共通していたり、人事制度が統一されていたりする場合です。

この構造の会社では、グループ内で会社を移っても、給料はほとんど動きません。

前に社内異動で職種を変えた話を書きました。あれは職種を変える手段としては有効ですが、年収を上げる手段としては効きません。 そこは分けて考えたほうがいい。

職種を変えたいなら社内を見る。年収を上げたいなら、テーブルそのものが違う場所を見る。目的によって、打ち手が違います。

では、転職する人は何ができるのか

ここから先は、構造から私が考えたことです。

① 年収の話を、入社後に先送りしない

「入ってから頑張ります」は、交渉を放棄しているのと同じです。悪気なく言っている人が多いと思いますが、相手からすると「この条件で納得した」という意思表示になります。

② 提示された金額ではなく、「どの等級か」を聞く

年収の数字だけ見ても、その会社の中でどの位置なのかは分かりません。等級や号俸の考え方を聞けば、その後どう上がっていくのかの傾きまで見えます。

聞きにくい質問に思えますが、制度として存在するものなので、答えられないほうがおかしい。

③ 格付けの根拠になる材料を、選考の早い段階で出しておく

格付けは、これまでの経験年数とポジションを見て決められます。決まってから覆すのは大変ですが、決まる前に材料を出しておくことはできます。

前に職務経歴書の話を書きましたが、そこで「何を決めてきたか」を書くべきなのは、これが理由でもあります。規模ではなく判断が、等級の根拠になるからです。

④ 交渉を自分でやらないなら、代わりにやる人を挟む

条件交渉は、本人が直接やると角が立ちやすい部分です。エージェントを使う実質的な価値のひとつはここにあって、求人を紹介してもらうこと以上に、条件の擦り合わせを代わりにやってもらえることのほうが大きいと思っています。

そしてエージェントは、企業側とその条件を握る立場にいます。自分がどのテーブルに置かれるかの交渉は、実質そこで行われている。

まとめ

  • 大きな会社の給料は等級テーブルで決まる。入社時の格付けが出発点になる
  • 入社後の頑張りはテーブルの中での話で、テーブルそのものは動かしにくい
  • 昇給を決める人と、採用条件を決める人は別。だから長くいる人と新しく来る人で、話が噛み合わない
  • グループ内で移っても水準が変わらないことがある。職種を変えるのと年収を上げるのは、別の打ち手
  • 交渉できる瞬間は、入社前の一度だけ

頑張る前に、決めるべきことを先に決めておいたほうがいいと思います。

では入社したあと、テーブルの中で給料を動かしているのは何なのか。続きは給料が上がらない理由と、昇格の仕組みに書きました。

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